
できるだけ安心できるものをと思い、近くの農家でとれた玉子を使ってプレーンオムレツをつくったとします。きっと食糧自給率向上にも貢献するだろうと思いますね。さて、このプレーンオムレツのカロリーベースによる食糧自給率はどうなるでしょうか。
そんな答えを出してくれるサイトがあります。
けいさん。こくさんきっと、100%とはいかなくとも、高い数値になると思いますよね。それがなんとたった9%に過ぎません。
それなら、純和風で冷や奴にしよう。これなら食糧自給率100%だろう。文句なしでしょう。いやいや答えは35%。残念でした。
じゃあ、国産表示の豚肉で生姜焼き。これなら自給率100%になるはず。
あっ、それも残念。大間違いです。13%にすぎません。
そういえば、「牛乳は国産です」というコマーシャルがありました。毎日国産の牛乳を飲んでいるから、大丈夫。それも大間違い。牛乳の自給率は11%にしか過ぎません。
あなたは、なにも分かっていませんね。もっと勉強してもらわないと、困るんですよ。そんな風に言っているかのように、調べる度に「自給率がピンチです!」「食料自給率を上げるには、毎日の自給率を知ることから。」という吹き出しがでてくるのです。
つまり、カロリーベースの食糧自給率を高めるためには、豚も、鶏肉も、豆腐も、国産牛肉もなるべく食べるなということです。もちろん、牛乳も控えてもらわないと食糧自給率は上がりません。米と地元でとれた野菜、そして魚を食べろということになってきます。
食糧自給率を高めるための
わたしのアクションのページというページがあり、やはりそういった内容でした。
なぜ国産だと思って食べても、その食品の自給率が低い原因、なぜ生産額では平成20年度で61%ある自給率が、カロリーベースでは41%しかない原因はどこにあるのでしょうか。豚も鶏も牛も、飼料を輸入しているからです。豆腐や醤油、いや味噌も納豆も、なかには国産の大豆をつかっているものもありますが、ほとんど原材料の大豆は輸入してまかなっているからです。
うどんも、多くは小麦を輸入に頼っているので自給率を押し下げます。蕎麦も、使われているそば粉のほとんどは輸入であり、自給率を押し下げます。小麦もそば粉も国産を使っていれば表示されていますが、小麦もそば粉も日本の需要をまかなえるほどの生産量はありません。
現在が、深刻な自給率不足といえるのかどうかはよくわかりません。ただ言えることは、消費者側の食生活を変えたところで、大きくカロリーベースの食糧自給率を改善できるわけではありません。
それよりは、カロリーベースの自給率を大きく下げている飼料や食品の原材料となっている穀物を国産化すれば、あるいは米でまかなうとすれば、大きく食糧自給率は改善します。つまり生産側、供給側の問題です。
飼料や原材料をなぜ輸入するのか、それは海外とは価格の開きが大きいからで、自給率を高めるために、飼料や原材料も国内生産を推進すれば、日常の食品が極めて高価格になるか、あるいは多額の税金を投入してコストの調整を行うかになります。いずれにしても高くつくことだけは間違いありません。
食糧の安全保障問題としても、食糧が輸入できなくなったとき、つまり最大の問題は安い飼料や原材料が来なくなって困るということです。そんな事態が近づくとまず起こるのは、飼料や原材料の価格が高騰することでしょう。
さてどうしたらいいのでしょうか。これも結論は簡単です。減少した分を、国内でつくればいいだけです。農業の担い手が減ってきていること、また減反政策によって、農地は余っているのです。農業の規制をはずせば、需要があり、価格があがり、事業採算が見合えば、新規参入が増え、供給は確保できます。
大豆や小麦にしても、現状では、国内での生産は価格が高くつき、よほど付加価値のあるものでしか使えませんが、それも消費者側の問題ではありません。
確かに間違ってはいないカロリーベースの数字を見せ、あるいは食料がピンチだと人びとに呼びかけ、啓蒙することには、筋が悪いということだけでなく、問題の本質を隠すことにもつながりかねず、なにか裏に別な意図を感じてしまいます。
食糧自給率の宣伝、啓蒙を行わなくとも、できれば国産の食料にしたいという意識は、食の安全を求めるニーズから高まってきています。それも問題は生産側、供給側に問題があって、カロリーベースでは、かんたんには実現できないというだけのことです。
参考:国民の自給と輸入に関する意識の推移(社会実情データ図録)
農水省も、日本の農業の本質的な問題は、日本の農業がきわめて生産性が低いことだというのはわかっているはずです。それは農業への新規参入に高い壁をつくり、零細な兼業農家の保護、つまり非効率なところに税金を注いできてしまったツケだということです。農業を保護することがかえって、農業の産業化を遅らせ、また弱体化させ、そして後継者が不足するという事態にまで陥ってきました。
そちらのほうがよほど食糧の安全保障ということでは大きな問題のはずですね。
こんなお門違いじゃないかと思いえるサイトを運営しているのは電通さんのようですね。知り合いが、会員登録がうまくできず、サイトで問い合わせて来た謝罪のメールでわかったのですが、FOOD ACTION NIPPON本部事務局は、電通内にありました。それで検索すると、この企画を進めプロデュースしたのも電通さんのようです。電通さんと農水省のコラボレーションのようですが、いい仕事とはいえません。
農業問題は、農水省と言うよりも、政治の責任も重いのです。農政には政治が強くからんできます。なせなら農村は票になるからです。それは、自民党であっても、民主党であっても同じだという気がします。
そんな歪みを生んだひとつの原因は、農村部に厚く、都市に薄い、一票の格差の影響も大きいのではないでしょうか。農村部で票を取るほうが効率的です。なにせ、都市部の4倍ほどの格差のある地域もありますから、選挙では四倍声が大きいことになります。また、零細な兼業農家のほうが数が多いので票になります。
この格差を是正しないと、どの政党であっても、票の誘惑には勝てない、結局はバラマキの悪循環を繰り返すという構造になってしまっています。日本の農業がおかしくなってしまった根本的な原因かもしれないですね。
いずれにしても結論はひとつ。消費者に啓蒙したところで、消費者でできる具体的な工夫の余地が少ないことを煽ったところで事業効果は薄いのです。
広告と同じように、つまり前提を問わず、「自給率向上の意識をいかに啓蒙するということからスタートし、プロパガンダをやってしまっているこのサイトについては、広告代理店としては、売上につながって結構なことでしょうが、もし税金が使われているとすれば、事業仕分けで、しっかり吟味して欲しいところです。
農水省としては資金を出していない、協賛金で電通さんが運営しているというのなら、自由におやりになればとは思いますが。
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